それでもあなたと結婚したいです。

「花枝さん?」


「奥様もこう言っておられますし、車を回しますのでお送りします。」


「花枝さん?どうかしたんですか?」


するりと腰に腕を回してくるけど、私は直ぐに払いのけ、一歩離れる。


(そう簡単に許さないんだから!)


「泉CEO、行きましょう!奥様は用事があるんですから、しかたありません。私がー」


金子秘書が言い終わる前に、後ろから彼の両腕が回り、私のお腹の前で繋がれた。

うなじから左肩にかけて熱い温度が伝わる。


「悪いけど、今、取り込み中だから、先に帰ってください。」


「でもっ!!」


金子秘書に振り向きもせず、千春さんが言い放つ。


「どうして怒ってるのか、俺に教えてください………。」


耳元で震える空気にゾクゾクする。


ドクンッ


この声を聞くだけで私の身体が熱く反応して、執拗に続く甘い尋問に私はあっさりと陥落してしまう。

何で怒っていたのかさえ忘れてしまう。


「花枝さん………答えてよ。」


どのくらい経ったのか、気づけば金子秘書は居なくなっていた。


「だって、今日は私が千春さんの専属のはずでしょ?………なのに………。」


「ごめん。金子秘書が花枝さんに頼まれたって言ってたから、つい甘えてしまいました。そんな風に思っててくれたんですか?………嬉しいです。」


耳たぶが噛まれたのかと思うくらい近くで、唇が動く。


「もう、分かったから……。」


横を向いて、千春さんに頬を寄せると、彼の細く長い指が私の動きに合わせて、耳から顎のラインを包む。


「じゃあ、一緒に帰ってくれる?」


「うん………。」


彼の罠にはまってしまえば、YES以外の選択肢は無いのは分かってる。

私達は人気の無くなった、薄暗いバルコニーで二度目のキスをした。


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