それでもあなたと結婚したいです。
早く、早く、風の様に速く。
さっき走って逃げてきた道を勢いよく戻って行く。
私は間違えたんだ。
だから、ちゃんと謝って、千春さんの病気と向き合わなきゃ。
今頃、症状が酷くなっているかもしれない。
独りで不安で怯えているかもしれない。
私が守ってあげなくちゃいけなかったのに。
ごめんね………ごめんね………ごめんね。
目の前に現れたドアを私は思いっきり開け放った。
バンッ!!
「千春さん!!!さっきはごめんなさい!!私、間違ってた。理由も聞かずに一方的に責めて………だから、仲直りしよっ?」
一度でも止まったら言えなくなりそうで、私は一息に思いの丈を吐き出した。
佐伯秘書と金子秘書は驚いて私を見ていたけど、私は千春さんだけを見つめた。
千春さんは黙って震える両手を私に向けて伸ばした。
まるで幼い子供が抱きしめる事を要求するかの様に。
(早く、来て………)
千春さんの絞り出すかの様な小さな声が聞こえた様な気がして私は駆け寄って、千春さんの頭を抱いた。
最初、震えて強張っていた身体が、少しずつ治まってくるのを感じる。
「千春さん?………大丈夫ですか?どこも苦しく無いですか?」
私の腕の中から見せた顔は優しく笑っている。
(あぁ、よかった………。)
私はもう一度、千春さんの頭をぎゅうっと抱き締めた。