それでもあなたと結婚したいです。
25 恋のライバル
千春さんも無事退院して、私達はまた元通りの生活に戻った。
会社で広まっていると思われた噂は何故か誰も知らず、佐伯さんも不思議でしょうがないと言っていた。
金子秘書といえば、今は千春さんの秘書からは外されて、殆ど顔も会わせないほどだそうだ。
あれで本当に引き下がったのか、なんかモヤモヤしたままだけど、自分の会社でもないし、佐伯さんに任せることにした。
私も、今日は新しい取引先の部長と会食なので朝から準備に余念がない。
「花枝ちゃんおはよ~。今日のMJの会食の準備出来てる?」
携帯片手に白川部長が出勤して来た。
ブラウンの3ピースのスーツをお洒落に着こなしている。
ここに来るまで何人の女の目を奪って来たことか………頭が痛い。
「フレンチが好きとの事でフレンチレストラン予約済です。」
「何か、先方から連絡があって、一人増えるみたいなんだけど間に合う?」
「えっ?何ですかそれ?!早く、言ってくださいよ!!当日に言うなんて!」
「だって俺だってさっき言われたんだもん。どうやら上の人からの頼みらしくて、断れないんだそうだ。やるだけやってみてくれる?頼むよ花枝ちゃ~ん。」
両手を合わせて拝むポーズ、何度この光景を見たことか。
「もぅ、嫌み言われるのは私なんですからね!」
「分かってるよ。………ご褒美あげるからさぁ。」
怒っている私に対してどこで買ってきたのか大きなぐるぐる巻きの棒キャンディーを渡してくる。
結構可愛いから厄介だ。
「何ですかご褒美って………子供じゃないんですけど………。言われなくてもやりますよ。仕事なんですから。」
「さすが花枝ちゃ~ん。出来る女!!いつもありがとう。愛してるよ。」
「ウィンクは結構です!」
空かさずの私の抑制に、白川部長は吹き出すように笑うと、私に向けて投げキッスをした。
「じゃあ、代わりにこれあげる。」
私が避けると益々笑って喜んでいる。