それでもあなたと結婚したいです。
夜の接待に向けて化粧を直し、パリッとした黒のスーツに着替える。
スカートは膝丈でタイトなものを選び、靴は勿論ピンヒールだ。
今日は眼鏡も掛けて、控え目な出来る秘書スタイルだ。
「白川部長~?準備出来ましたかぁ?」
「あぁ、後、ネクタイを着けるだけだ。………あっ!そうだ。花枝ちゃん着けて?」
「えっ?何でですか?自分でしてくださいよ!」
「だって、花枝ちゃんが新妻としてちゃんと役目を果たしてるか、上司としてチェックしないと。………あれ?もしかして、ネクタイ結べないの?」
「ちゃんと出来ます!!貸してください!」
「さぁ~て、ちゃんと出来るかなぁ?」
部長の手からネクタイを奪い取ると向き合って立った。
「練習はちゃんとしました………ですから、ちゃんと出来ます。」
「そう?………さぁ、どうぞ。」
背の高い白川部長は私を見下ろして、試すような視線を送ってくる。
私はムキになって首に掛けてネクタイを結び始めた。
「………?………ん?…あれ………?確かこうなって、この下を通して………」
試行錯誤してる手が部長の手に握られた。
「これは、こっち。」
部長に誘導されるままネクタイが結ばれていく。
部長からは品のよい香水の匂いがして、大人の男の雰囲気に酔いそう。
早く離れたいのにネクタイはまだ行ったり来たりを繰り返している。
いくら白川部長でも、近距離で手を握られて、こんな風に視線を浴びると緊張してしまう。
「まだ、ですか………?」