それでもあなたと結婚したいです。
やっとの事で抜け出せて安堵していると、何故か彼も降りてきた。
「ここに住んでんのか?」
「そうですけど………?」
私が答えると急に口許を押さえて笑い出した。
「クックックッ………奇遇だな、俺もここ。」
人差し指を上層階に向けて指した。
「えっ?」
指を向けられてとっさにその方向に頭を向けると急に酔いが回って、グラッと視界が動いた。
「おっと!」
気づくと私は桐島に抱き留められていた。
「!!………す、すいませんっ!」
急いで離れようとすると腰をグッと引き寄せられた。
べったりと密着状態のまま私は上半身だけ逃げて後ろに反らす。
「上まで送ってやるよ。」
「けっ結構です!!主人が居ますから!!」
「あんたの何階?」
「45階ですけど………。」
桐島はチラリと上層階を眺めてからまた至近距離で私に向き直った。
「上の方全然灯り無いけどまだ帰ってないんじゃない?」
試すような伏せ目で私を挑発する。
頭の回転が早い、かなりの遣り手だ。
普通の独身女だったら、一発でコロッと行っちゃいそうな強引さがある。
千春さんとは正反対の生き物。
どうやって返そうか考えてる時だった。
私の体が強引に彼から引き離された。
「わっ!!」