それでもあなたと結婚したいです。

バランスを崩して抱き留められた先は千春さんだった。


「私の妻に何か御用ですか?」


千春さんの腕の中で安心した私はチラリと千春さんの顔を盗み見た。

明らかにムッとしている。


(ヤバイ。まずいとこ見られた。無防備だってまた、怒られちゃうかな?)


「仕事の会食で一緒に飲んだので、酔った彼女を送ったまでです。家もここなんで。」


「そうですか。それじゃあ、これで失礼します。」


どこまでも強気でくる桐島にヒヤヒヤしながら私は黙って千春さんに支えられていた。


「泉さん。素敵な奥様で羨ましいですね。これから奥様とは長い付き合いになると思うので宜しくお願いします。」


(まったく何を言ってんだこの男は~!!!)


「仕事以外の彼女は全て私の物なので、少しの期待もしないでくださいね。」


歩みを止めると、にっこり笑って千春さんは答えた。


(千春さん………恐っ!!かなり怒ってらっしゃる………。)


桐島の返事は聞き取れなかったけど、私は千春さんに促されるままエレベーターに乗った。

背中に桐島の視線を痛いくらい浴びながら。

私のふらつく身体を支えたままエレベーターのボタンを押す。

終始無言で冷や汗とドキドキが止まらない。


(何か言わなきゃ………取り合えず言い訳して、謝らなー)



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