それでもあなたと結婚したいです。

大真面目にそんな事を言って私にニカッと笑って見せる。

童顔な顔に黒縁の眼鏡が似合っていて、如何にもインテリ系の雰囲気を醸し出している。

眼鏡を外せばジャニーズに入れそうなレベルだ。

どうやら本人はそれが嫌なようで、だて眼鏡は殆ど外さない。

最近はそんな事も少し分かってきていた。


「よく、そんな恥ずかしい事、本人を前にして言えますね。信じられません。」


「俺、中学の頃、事故に遭ったんだ。」


「何ですか?急に。」


「いいから聞いて!」


「いつもとなんら変わんない日だった。口うるさい母親と喧嘩して、普通に学校に向かった。十字路を渡ろうとした瞬間、一時停止を無視したバイクにドンって。意識が戻るまで一年掛かった。それ以来、毎日何が起きるか分からないから、伝えたいことは我慢せず言うようにしてるんだ。特に感謝の言葉とか、愛の言葉とかね!」


そう言うとまた、私に向かって二カッと笑った。


「金子秘書も、そんなに美人で仕事出来るんだから、下を向いてないで、わが社のスーパーエースの俺と天下取ろうぜ!!」


「ぷっ!なんですかそれ………あはははっ!!」


久しぶりの自分の笑い声に驚いた。

ここ何年笑ってなかったのか。


「笑ったなぁ~!!俺は本気だぜ!!」


「あははっ!何の漫画の主人公ですか!フフッ………嘘臭いです!」


お腹の底から笑うとこんなに気持ちいいんだ。



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