それでもあなたと結婚したいです。
「それでは失礼します。」
面倒なことを言われる前に退散しようと踵を返すと、案の定、待ったが入った。
「おい。今日はお前は俺の世話係だって言ってるだろ?お前には取引先の社長に対して、おもてなしの心は無いのか?」
(こいつ~~!また、減らず口を………でも、今日は逆らえない。)
「………失礼しました。…何か私に出来ることありませんか?」
いつもより服従姿勢の私に満足そうに、にんまり笑うと片手を動かして自分の方に来るように指示した。
「俺の近くに。」
「…はい。」
正面に立つとソファーに寄り掛かりながら、上から下まで私を見た。
「今日は俺のための特別仕様か?」
「はっ?」
「そんな恰好して、誘惑してないなんて言わせない。」
「そんなんじゃありません!!私はただ、さっき転んでしまって、用意した服だと膝の怪我が見えてしまうし………そしたら同僚が膝を隠れるスーツを貸してくれると言われて………」
「膝は隠れてるけど、出てるところも多いと思うけど…?」
グッと私に近寄ると耳元に囁いた。
「!!」
「転んだ時の怪我ちゃんと手当てしたのか?」
「応急措置はしました!これからちゃんと手当てしますから失礼してもいいですか!!」
「取り替えるやつ持ってるのか?」
「ご心配なく。ちゃんと持ってます!」
ポケットから大きめの絆創膏を取り出して、これ見よがしに見せた。