それでもあなたと結婚したいです。
自分が悪いから仕方がない。
彼の怒りが収まるまでやり過ごすことにした。
(スーツ何着て行こう………花枝に恥を掻かせないようにしないと………それと、花束も持って行こう。)
彼女の喜ぶ顔が目に浮かぶ、全て完璧にして行かないと。
佐伯の手前、俺は弾む気持ちを圧し殺して綺麗にドレスアップするであろう妻に思いを馳せた。
それにしても、あの男………既に結婚していると分かっている女性に迫るなんて普通じゃない。
金持ちならではのただのお遊びか?
本気だとしても、正気とは思えない。
あの日、マンションのエントランスで会った時から嫌な予感はしていた。
「だから、牽制しておいたのに……面倒な人だ……。」
「面倒とは誰の事でございますか?」
つい考え事が口に出てしまって慌てて押さえた。
「違うって…!」
「私のお教えしたスケジュールを勝手に変更しておいて、面倒とは…!!」
「お前の事じゃないって………。」
「本当でしょうか?信用し兼ねます!!私があの後どれだけ苦労して時間を作ったか分かりますか?全く!!」
「分かった。俺が悪かったよ。」
おおよそ信じられないといった顔で俺を見ている。
これはまずった。
しかし、よりによってどうして彼女なんだ。
きっと彼なら選り取り見取りだろうに………彼女の魅力を知ってからと言うもの俺は彼女の虜だが、彼も花枝に会って直ぐに、何かに惹き付けられたのか?