それでもあなたと結婚したいです。
何にせよ、絶対に負けたりしない。
「泉CEO聞いてますか!!」
「佐伯秘書、バラの花束が欲しいんだが………色はそうだな………淡いピンクと白を混ぜた物を。」
俺の突拍子もない台詞に呆れたのか、大きな溜め息をすると佐伯は電話をし始めた。
「花束はいつもの店に頼んでおきました。パーティー用のスーツは私が自宅からお持ちしますので、それでよろしいですか?」
「佐伯。いつもありがとう。」
「ゴマすったって、今更遅いです!」
佐伯はそう言いながらも、満更でもない表情で部屋を出ていった。
(口煩いけど、最後にはいつも動いてくれるんだよな…。)
ふと、5年前に居た秘書を思い出した。
彼女は聡明でいつも俺の味方で、何でも先回りして俺をサポートしてくれた。
俺は安心して何もかも彼女に頼っていた。
不完全な自分を、まるでシェルターの様に守ってくれる彼女に俺はすっかり甘えていた。
彼女が急に姿を消した時は正直、かなりのショックだった。
心が丸裸で放り出されたようで、暫くは戸惑うことが多く、人知れず振り返した症状に苦しんだ。
今でも疑問に思う。
彼女は何故、急に姿を消したのか。
彼女が居なくなって、秘書も佐伯に代わりやっと最近息が合うようになってきた。
彼女の事も思い出になりつつある。
「いくら考えても、俺に分かるわけがないか………。」
一息ついて、とっくに冷えきっていた残りのコーヒーを俺は飲み干した。