それでもあなたと結婚したいです。
異様な空気が漂うVIPルーム。
最初はお互い挑発しながら飲んでいたが、杯を重ねるごとにどんどんと、口数が減り、今となっては二人とも下を向いたまま動かなくなっていた。
「千春さん大丈夫ですか?もう、止めましょう?ねっ?」
「うう~…ん。だめら、おれが勝つまで………飲まらいと…。」
まるで呂律が回っていない。
向かい側の桐島に至っては、こっくり、こっくりと居眠りを始めている。
(はぁ~~あ。何やってんのよ二人とも。)
「桐島社長!大丈夫ですか?眠るなら車呼びますよ?」
「ん?………んん。」
(聞こえてんのかな?)
酔っぱらい二人に途方に暮れかけていると、VIPルームの扉が開いた。
「失礼します。」
入って来たのは、あの美人秘書だった。
「うちの社長がご面倒をお掛けしまして誠に申し訳御座いません。………今日の所は遅いですし、このままお暇いたします。」
淡々としゃべると小さく笑みを浮かべ、彼女は丁寧にお座義した。
(綺麗な人…。)
「いいえ。こちらこそご迷惑をお掛けしました。お送り致します。」
「大丈夫です。旦那様に付いていてあげてください。………よかったらこれを………。」
彼女が差し出したのは炭酸水だった。
「水よりお好みかと思いまして。………それでは失礼します。」
他の部下も手伝って桐島は連れられていった。
「炭酸水………?」