それでもあなたと結婚したいです。
31 過ち
窓の外を見ると、もう夜が白み始めていた。
テーブルの上に置いてあるタバコに火を点けたところで閉じられていた寝室のドアが開いた。
「終わりましたよ。」
「あぁ、助かったよ。………俺が着替えさせる訳にはいかないし………こんな時間に悪かったな。」
「フフッ…。桐島社長、貴方にも躊躇する事があったんですね?」
小さく笑いながら何か言いたそうな顔をしている。
「なんだよその目は?俺はただ、フェアじゃない事が嫌いなだけだ。」
「そうですか。………私はてっきり………」
「てっきり何なんだよ?」
「いいえ。………それよりこれからどうするんです?彼女の熱はまだ下がりそうにありませんけど。………先生も安静にと仰いました。」
「あぁ………。」
「行方が分からないと、旦那様が心配なさると思いますけど。」
「じゃあ、俺からー」
「私がお伝えしても宜しいですか?」
「え?………ああ、じゃあ頼む。今日はオフだし彼女はこのまま俺が付き添うから、話があるとだけ伝えてくれ。」
「かしこまりました。」
「一応、お粥はお作りしました。ゼリーやスポーツドリンクなど軽く食べれる物は冷蔵庫に入れて置きましたのでご自由に。それでは失礼します。」
秘書が帰った後、音を立てないようにゆっくりと寝室に入ってみた。
熱のせいか、眉間にうっすらシワを寄せている。
「まだ、目を覚まさないのか?………それとも、目覚めたくないのか?」