それでもあなたと結婚したいです。
最悪のシナリオが頭を過る。
「俺は…酔った勢いで………何をした?」
ピンポーン
急に部屋のチャイムが鳴り、急いで服を着て玄関に向かう。
「花枝!!」
ドアを開けると一人の女が立っていた。
背が高くモデル並みの容姿をした懐かしい女人(ひと)。
「お久し振りです。泉CEO。」
「………………美緒。」
「覚えていてくれて嬉しいです。」
「どうして君が?」
「奥様の事で伝言を預かって参りました。中に入れて貰えませんか?」
(花枝!?)
「分かった。」
訳が分からないまま、ドアを開けて彼女を中に促した。
中に入れておいて、リビングの散らかっている状況に気づいた。
「少しここで、待っててくれるか?今起きたばかりで着替えたい。」
「分かりました。」
久し振りに見る彼女はあの頃と少しも変わらなかった。
むしろ更に若く美しくなっていた。
俺の前から姿を消したその後の人生が彼女をここまでにしたのだろうか。
俺は苦しんだが、彼女はそうではなかったのだと思い知らされた様で何だかショックだった。
しかも、急に俺の前に現れて、花枝の行き先を握っている。
全く訳が分からない。
「待たせて悪い。」
「いいえ。」
「それで、5年前に急にいなくなった君がどうして私の妻の行方を知っている?」
「………なんか、棘のある言い方ですね?」
「そう聞こえたなら、すまない。」
「フフッ………。いいえ、結構です。本当の事ですから。」