それでもあなたと結婚したいです。

目を覚ますと知らない部屋だった。

知らないベットに、知らない匂い。

落ち着かない空間。

でも、今の私にはどうでもよかった。

目を覚ましたら全部が夢だと何度も願ったが、涙で濡れた枕は私を容赦なく現実に引き戻した。


「やっぱり、夢じゃないのね………。」


気を抜くとまた決壊しそうになる涙腺をグッと堪えた。

だるい体を引きずって、ベットから立ち上がる。


(身体が熱い………私、あのベンチで熱だして倒れたのねきっと………。それならこの部屋はあの人の家だわ。)


同じマンションの間取りは同じ、取り合えずリビングへ向かった。


隙間の開いた曇りガラスをノックしようと拳を握った所で、中から話し声が聞こえた。

とっさに手が止まった。


「伝言はちゃんと伝えました。直接連絡が来ることでしょう。」


「ああ、助かったよ。あいつどんな感じだった?俺の所に居るって言ったら逆上してなかったか?」


「逆上?………フフッ…泉CEOはそんな幼稚ではありませんよ。内心は分かりませんけど………。」


(千春さん?)


「前から気になってたけど、泉 千春と顔見知りなのか?」

「………はい。以前、秘書をしていました。」


(以前、秘書………それって………)


「木暮 美緒さん!!!」


私は後先を考えずリビングのドアを勢いよく開けていた。



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