それでもあなたと結婚したいです。

何も言えなかった。

彼女の不安や葛藤が、全て自分に当てはまったから。

彼女を責めることは出来ない。


「そうだったんですか………。何も知らないで失礼な事ばかり言ってしまって…すいませんでした。」


「いいのよ。泉さんが辛くなるのを分かってて姿を消したのは私が悪いもの。5年もずっと思い続けてこの先、私を見てくれる日が来なかったら私は立ち直れない。だから、自分で終りにしたの。」


彼女の話は私の心に重くのし掛かった。

5年も駄目だったのなら、私だって例外ではない。


「それにね、泉さんが私に見向きもしないで他の女と、次々と付き合ったんですもの、少しは仕返ししてもいいでしょ?」


辛い過去を物ともせず、彼女は快活に笑った。

自分も同じ立場になったら、彼女の様に強くなれるだろうか?

きっと無理だ。

私の心は既に千春さん無しでは息が出来ない所まで深く近づき過ぎてしまった。


「まぁ、付き合ったって言っても、全て上部だけの付き合いで、私が知る限り誰にも心を許したことは無かったわ。」


「そう………ですか。」


(今まで数多くの女性が駄目だったのなら、私も…きっと…)


「でも、あなたは本当に特別みたいね。」


「えっ?」


「気づいてないの?それなら私が帰った後、鏡を見てみなさい。あなたが特別だって言う理由が分かるわ。」


言うだけ言って、彼女は格好良く、潔いよい足取りで部屋を出ていった。


< 291 / 436 >

この作品をシェア

pagetop