それでもあなたと結婚したいです。
夢の様な感覚………
しっかり覚えている。
自分の身体が自分の物じゃ無いように熱く燃えたあの夜。
目が覚めて現実だと知ってからは妙な高揚感が身体中を巡っている。
俺は熱に浮かされたように夢中で彼女を求めていた。
(俺は病を克服できたのか…………?)
今までに無い期待が芽を出した。
(昨日は何が違った…………?よく昨日の事を思い出さないと…………)
『千春さん………。』
腕の中で甘い声で俺を呼ぶ花枝が脳裏に浮かぶ。
ドクンッ!!
(何か俺………おかしい………。花枝のあの顔を思い出すだけで心臓がドクドク脈打って、緊張している。これが普通の男の心境なのか?もし、そうならこれ以上、花枝に触れたらどうにかなってしまいそうだ。)
掌に握っている名刺を見る。
桐島が花枝を助けてくれた事は感謝するが、今もあの男の手中に花枝が居ると思うだけで、居てもたっても居られない。
早く迎えにと思うのだが、美緒が言った言葉が引っ掛かった。
花枝は俺を避けている………。
覚えて無いが、俺のした事が彼女を傷つけている。
真実を知るのは怖いけど、それ以上に花枝を失うことの方が怖い。
「とにかく、花枝を迎えに行かなきゃ始まらない………。」
名刺の裏に書かれた番号に電話を掛けてみる。
二回目の呼び出しで、待ち侘びたように桐島が出た。
「………遅くないか?!」