それでもあなたと結婚したいです。
当然のように電話口の桐島は苛立っていた。
「妻を助けて戴いたと聞きました。本当にありがとー」
「綺麗事はいいんだよ!!畏まってないで、本音を言えよ!!」
「………………。」
「人に悪く思われるのが怖いか?本心を曝け出すのは恥ずかしいか?あんたの妻はその程度か?!!」
「…………だまれ。花枝を侮辱する事だけは許さない。」
「フンッ………やっと本音が出たか。あんた自分の奥さんに何したわけ?あんなにボロボロになるまで独りで放置して。」
「ボロボロになるまで?」
「恐らく夜通しずっと走ってたんだろう、汗だくで家に入らずそのまま外に居たようだった。………俺が話し掛けるとなにも言わずただ涙を流していた。あんな強い女がだぞ?………見てられなかった。」
彼女の泣き顔を想像するだけで、本当に何かが刺さったように胸がズキンっと痛くなった。
(………ごめん…花枝…ごめん………)
「………あんたの事、俺のテクニックより凄いって自慢してたのに、泣かすなよ………俺は女の涙がこの世で一番嫌いなんだ。あんたがそんななら、俺があいつを守る。」
自分が俺なんかと一緒になって、一番不安で苦しんでるだろうに、きっと今までも見えないところで俺を庇って、守っていてくれてたんだ。
(花枝………。)
「俺が許されない事をしたのは否定しない。………だけど、俺にとって花枝は唯一の人なんだ。だから、誰にも彼女を渡せない。勿論、桐島さん…あなたにも。…………だから、花枝を……私の妻を返してください。」