それでもあなたと結婚したいです。
32 ねむり姫の夜
家を飛び出して、無意識に向かっていたのは千春さんの会社だった。
途中でタクシーに乗り、暫くして車窓から千春さんの会社silver millenniumが見えてきた。
「あっ電話しなくちゃ!」
(私ったら秘書業してるくせにバカだ。大企業にアポなしで行ったって通してくれるはずがない。………今日は休日だし。てゆうか、家出る前に電話するだろ普通………本当何やってんだろ………慌てすぎ。)
バックを開けて携帯を探す。
いつものポケットに入っていない。
「あれ………?」
(嘘………忘れた?せっかくここまで来たのに………。)
誰に聞くにしても携帯が無ければどうしようもない。
(しょうがない。通してもらえなくても、会社に居るかどうかは教えてくれるかも知れない。一応聞いてみよう。)
直接警備員に取り合ったが、案の定、部外者扱いで断られた。
(どうしようこれから………。一回、家に帰る?)
「そうだ!」
近くに黒木先生の事務所がある事を思い出した。
(取り合えず、先生に千春さんの番号教えてもらって電話させて貰おう………。)
私はまたタクシーを止めて黒木先生の所へ向かった。
5階建てビルの最上階の事務所直通のエレベーターに乗る。
幸い事務所の入り口は開いていた。