それでもあなたと結婚したいです。

「ねむり姫………ねむり姫………。」


この声は誰?

ねむり姫って誰の事?

私はねむり姫なんかじゃない。

私の名前は…………………?


「ねむり姫………モラトリアムはもう終りに近づいているよ。」


モラトリアムってなんだっけ………?


「その時が来たら貴女はどうするの?それともどうなるの?」


何が?何なの?


「どうするの?どうなるの?」


分からない。


「どうするの?どうなるの?」


分からない!


「どうしたいの?」


「だから!分からないってば!!!」


目を覚まして飛び起きると、辺りは薄暗くて事務所の窓からは無くなりかけた西陽が僅かに差していた。

夢か現実か覚束無い頭で額を拭うとじっとりと汗をかいていた。


「夢か………………モラトリアムって………何あれ?………怖っ。てゆーか今、何時?」


電気の点いていない薄暗い部屋を見回す。


「先生ー?黒木先生ー!?」


(もぅ、10分で起こすって言ったくせに絶対ワザとだ!)






「起きましたか?」





暗がりに響くのは聞き慣れた声。




「千春さん…………?」


「ずっと捜してました。」


「私も!………捜してたんです!やっと会えて良かったぁ。」

暗がりに居る千春さんは何も言わない。

暫く沈黙が続く。


「千春さん…………私、聞きたいことがあります。」



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