それでもあなたと結婚したいです。
明らかに、わざとらしい大声で呼ぶ声が響いた。
寸での所で二人ともパチッと目を開ける。
『黒木先生!?』
声がユニゾンする。
「入ってもいいですか?」
「ちょっちょっと待ってください!!あのっ!今っ!」
千春さんに、手伝って貰って慌てて服を着替える。
「どっどうぞ!!」
水色のシャツにマリンカラーの入ったネイビーのカーディガンが爽やかに、ゆっくりとした足取りで黒木先生が入ってきた。
おそらく二人なのを分かっていたのだろう、全く驚きもせずこう言った。
「あれ?お二人一緒だったんですか?驚きました!」
憎いくらい、わざとらしい。
「えぇ…はい。すいません、事務所に勝手に泊まったりして。」
「いいえ。結構ですよ!むしろ嬉しいです!!ここが二人にとって特別な場所になって。」
「えっ!?なっ何の事ですか?」
黒木先生はにっこり笑い、私の前まで来ると、そっと耳打ちした。
「ブラウス…裏表逆ですよ?」
バッと確認すると羽織るだけのブラウスは裏返っていて、タグがぴょんと飛び出ていた。
「あぁ~~~………。」
「いいじゃないですか。私は泉さんの主治医なんですよ?知る権利が有ります!」
陰に行って、ブラウスを直しにかかる。
「そうですけど、まだ………恥ずかしいんです!!乙女心を察して、ここはスルーしてくださいよ!!もぅ!!」