それでもあなたと結婚したいです。
いつもは冷静な美緒さんが、明らかに興奮してコーヒーを手に溢した。
「熱っ!!」
「大丈夫ですか?あっ、これ!この布巾使ってください。」
火傷しないように直ぐ様、彼女の手を濡らした布巾で覆った。
「…………良かったわね。」
美緒さんは私から布巾を受け取りながら穏やかに、にっこり笑った。
「ありが………とうございます。」
彼女の笑顔があまりにも優しかったから、じわっと涙が滲んで少し言葉に詰まった。
「何?泣いてるの?フフッ…可愛い人ね。私ももう少し可愛いげがあれば選ばれてたのかしら?」
「私は可愛げなんてありません!!他の事では我慢できるんですが、千春さんの事となると涙腺が緩んじゃうだけで………本当は全然可愛くなんてないんです。」
彼女は私をじぃーっと横目で見つめながらコーヒーを一口飲んだ。
「気づいてないだけで、とっても可愛いわよ。あなたみたいな勝ち気な女性の涙は貴重なんだから。男には効果抜群。」
「………私、実を言うと結婚なめてました。男性との付き合いも困ったことなかったし、結婚も条件重視でお見合いしました。全て自分の思い通り、計画通りに進むと思っていたんです。でも、千春さんと結婚して、次々と予想外の出来事が起きて、その都度カッコ悪い自分を晒けださせられて、どんどん自分が変わって行くのを感じました。今まで理想としていた女性像とはかけ離れてしまったけど、今の自分も気に入っているんです。」