それでもあなたと結婚したいです。

「仮面パーティー?俺も着けるのか?」


「はい。全員着けるのがドレスコードです。」


「そうか………。」


顔を覆う事が昔から苦手で、いつからなのかは分からないが恐怖を感じる。

冷や汗が出てきて、動悸が激しくなる。

一種の閉所恐怖症なのだと思う。

今日は仮面で、目を覆われる訳ではないから何とかなるだろうが、やっぱり気は進まない。


会場に入ると受付で仮面を渡された。

VIP用の仮面は特に精巧な造りで、恐らくベネチアから取り寄せているのだろう。


俺に渡された仮面はシンプルで目のところだけを隠すタイプで金色の細工が綺麗な物だった。


「結構本格的だな?」


振り向いて後ろの佐伯を見ると道化師のようなフルマスクでかなり目立っている。


「佐伯秘書だよな?」


「はい。何か?」


「ぷっ…あははははっ!!そんなの着けて真面目に話すなよ。クックックッ………。」


「仕方無いじゃないですか。秘書は、道化師と決まっているようなので…。何が可笑しいんですか?」


「だからぁ!ぷっ…クックックッ…。俺を見て、真面目に話すなって!」


「いいですから、さっさと会場に入ってください!」


「分かったって………クックックッ。」


久し振りに笑ってお腹が痛い。

落ち着く為にも飲み物を取って、飲み干した。


「ふぅーーーー。おっと………。」


周りを見渡すとやはり見事に仮面だらけだった。

よく見ると佐伯秘書が行ったように、それぞれ決まった仮面を着けている。




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