それでもあなたと結婚したいです。
社長職や役員などは比較的顔が分かりやすい目のところだけ隠す仮面。
その同伴のパートナーの女性は女性的な綺麗な装飾のある仮面。
秘書はさっき言ったように道化師の仮面。
その他の家族は動物などの仮面で可愛い。
いつもとは違うパーティーの様子は面白くて、俺は窓際で火照った頬を冷しながらその様子を眺めていた。
「佐伯、お前ももう、帰っていいぞ?」
「は?」
「お前もイブくらい一緒に居たい人、いるだろ?」
「別に………いません。」
「いいから、帰れ。今日くらいはゆっくりしろ。今更だけどな。」
窓の外を見ながら佐伯は暫く黙って考え込んだと思ったら、意外にあっさりと受け入れた。
「なんの気紛れか分かりませんが、お言葉に甘える事にします。それじゃあ失礼します。」
「あぁ…、気をつけて帰れ。」
「はい。」
道化師の秘書を見送りながらシャンパンを飲んでいると入れ違いに婦人の仮面を着けた女性が入って来た。
キョロキョロ見回した後、飲み物を受け取るとゆっくりと歩き出した。
仮面をしていても分かる。
きっと綺麗な人だ。
ゆったりとしたドレスなのにウエストはきゅっとくびれている。
まるでどこかのお姫様のようなドレス姿。
歩いている間も男達が何人か近寄ってくる。
それも上手くかわして、俺の近くに落ち着いた。
今日は仮面をしているのもあって、いつもよりは気づかれないので気が楽だった。
きっと彼女もどこかの令嬢で声を掛けられるのにうんざりしているのだろう。
俺は彼女に気づかない振りをして自分の時間を過ごしていた。