それでもあなたと結婚したいです。

「はい!出来上がり!!」


くるんと回る椅子で鏡に向かされる。

そっと目を開けると、間接照明に照らされたドレス姿の自分がいた。


「わぁ………素敵。」


シルクとレースで出来たドレスは所々に同素材でバラの飾りが付いている。アンティーク風の造りだけど決して古くない。

髪は黒いサラサラのロングで前髪は初めてのぱっつん。

これでマスクを着ければ本当に別人だ。


「凄いでしょ?」


「うん。ビックリした。………本当に凄い。」


「結構時間掛かっちゃったけど、大丈夫?」


「あっそうだった!急がなきゃ!!これ、いくら?凄い高そう…。買えるかな?」


「うちはドレスはレンタルなんだ。さっきもらった額に入ってる。ほら、早く行きな!」


「あっ!うん。じゃ、また返却に来るね!」


移動時間が掛かるからギリギリ間に合う時間だ。


「早く急がなきゃ。」


会場に着くまで少し恥ずかしかったけど何とかタクシーに飛び乗った。


中に入ると丁度、佐伯秘書が仮面を外して出入り口に向かって歩いて来た。


(わぁ!ヤバイ気づくかな?)


ドキドキしながら佐伯秘書との距離が近づく。

佐伯秘書はチラリと私を見て、何事もなかったかのように通り過ぎた。


(ああ、よかったぁ。千春さんに会う前にバレたらこの苦労が水の泡だもんね。それにしても佐伯秘書が分からないなんて完璧ね!!これなら自信を持って行ける!!)





< 344 / 436 >

この作品をシェア

pagetop