それでもあなたと結婚したいです。
千春さんを見つけるのは案外、容易だった。
スーツを用意したのも私だったし、佐伯秘書が来た方向からも予想はついた。
仮面の狭い視覚の中、真っ直ぐに向かう。
「お一人ですか?飲み物でも一緒にいかがですか?」
突然声を掛けられて横を見ると、知らない仮面の男が口許に笑みを浮かべてカクテルを差し出している。
「いいえ………。連れがいますのですいません。」
やんわりと断ると男は少し恥ずかしそうに離れて行った。
(変な男と遊んでる暇はないわ。………取り合えずさりげなく近くに陣取らなくちゃ。)
出来るだけゆっくりと優雅に歩き、空いている席に座る。
近くに来たものの、緊張して何て話しかけていいのか分からない。
暫く経ってから漸く話し掛けようと立ち上がった時だった。
4、5人の男性客が私の周りを取り囲んだ。
「こんばんは!」
「君、とても綺麗だね。ドレスも素敵だ!」
「名前は何て言うの?どこかの令嬢?」
「若いよね?もしかしてまだ、十代なのかな?」
「独りで退屈してたんでしょ?あっちで俺達と飲もうよ!」
急に騒ぎ立てて、こっちが返答する前に次々と被せられる言葉。
「あの………ちょっと…私………」
腕を引かれ、肩を抱かれどうにも抜け出せない。
大声を上げて思いっきり振りほどきたい衝動に刈られるけど、千春さんが近くにいるし、我慢するしかない。