それでもあなたと結婚したいです。

「あら~!!泉さんじゃありません?仮面をしてたから全然分かりませんでしたぁ!!」


「どうも。」


一時仮面を外しただけで千春さんの周りはすぐ女性に取り囲まれた。


「まぁ!やっぱり仮面をしてても泉さんの素敵なオーラは隠せませんわねぇ!」


「奥様は?来られてないんですか?」


「えぇ…まぁ、ちょっとー」


「えぇ!!夫婦同伴のパーティーに出席しないなんて、信じられません!旦那様を立てないで、一体何をなさってるの?」


一際恰幅のいいマダムが悲鳴のような大きな声を上げる。


(どうしよう………このままじゃ千春さんの立場がない。だけど………。)


このまま帰ればいいのに、一歩が出ない。

せっかく履かせてもらったきらきらの刺繍が入ったハイヒールも行き先に迷ってしょんぼりしているようだ。

その間にも千春さんに群がる女性はあーでもない、こーでもないと、話続けている。


「泉さんの知らないところでどこかのパーティーにでも行ってるんじゃありませんか?」


(違うっ!!)


さりげなく千春さんの腕にしなだれかかる胸の露出が際どい女性。


「イヤーね。何を考えてるのかしら。私だったらこんな旦那様放っておかないわ。」


(やだ!!千春さんに触らないでっ!!)


「皆さん…そうじゃ無いんです妻は…ー」




「お待たせしましたっ!!」




私は咄嗟に仮面を外して、彼の元へと走っていた。


「千春さん。すいません、お化粧室混んでて遅くなりました。」



「かっ花枝?!」


「皆さん、こんばんは。主人の相手をして頂いてありがとうございます。すいませんがそろそろ私達はお暇しますので…ねぇ、あなた?」



「え…えぇ。それじゃ…失礼します。」





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