それでもあなたと結婚したいです。
「………千春さん…。」
少し悲しそうに照れる彼が愛しくて、自分から彼の首に手を回した。
「今まで他の人と付き合ってて、こんな風に思った事無かったけど今は凄くそう思う………。」
「えっ?」
「貴方の思い通りの女になりたい………。」
「………花枝…ありがとう。その言葉で十分だよ。来年からは一緒にパーティーに行こう。その時だけは、変な独占欲は棄てて君を自慢するよ。」
「うん。」
「ここ数日かなり我慢したから…最後は君を全部、独占してもいいだろ?」
タイを片手で外しながら千春さんの伏し目がちな瞳が近寄ってくる。
私はいつもギリギリまでその瞳を見たくて薄目を開けている。
二人の唇が一つになる瞬間、漸く私は瞳を閉じて彼を感じた。
胸がぎゅうっとなって、苦しいのに止めたくないこの感覚。
久し振りの快感に身体が震える。
千春さんの指が背中のファスナーを下ろし始める。
「千春さん………あの…まだ、車の中だし………んんっ…ねぇ?運転手さんも居るん…だよ?」
彼の胸を弱く押し返すと、逆に押し倒された。
「大丈夫…。」
千春さんはリムジンに備え付けられているボタンを押した。
すると運転席のと後部座席の間は黒いスモックで覆われた。
「ちっ千春さん!何も大丈夫じゃない!!全部聞こえちゃうよ!」