それでもあなたと結婚したいです。
大晦日。
私は千春さんとの初めての年越しに備えて買い物に出掛けていた。
殆んどは用意していたのだが肝心のお餅を買い忘れていたのだ。
ついでにお酒ももう少し買い足そうかと考えていたところだ。
「こんばんは。」
後ろから声を掛けられて振り向くと黒木先生が立っていた。
私服姿で買い物袋を下げている先生はちょっと可愛い。
「こんばんは。お久し振りです!黒木先生もお買い物ですか?」
「えぇ。事務所で軽く忘年会するんです。ギリギリになってしまったんですけどね。」
黒木先生は申し訳なさそうな顔で笑った。
軽くと言う割りに高級ワインの紙袋を持っている。
「へぇ~…。白金さんとですか?」
「えぇ。まぁ…。よく分かりましたね?」
「まぁ、私も女ですからそんなに鈍くありません。」
「??」
キョトンとした顔で私を見る黒木先生が面白くて思わず笑ってしまった。
「フフフフッ!」
「何笑ってるんですか?何か面白い事言いましたっけ?」
「いいえ!ただの思い出し笑いですので気にしないでください!」
「そうですか。………そう言えばあの日以来、全然病院に来てませんね?次はいつにしますか?」
黒木先生が手帳といつもの万年筆を取り出した。
「年明けの………」
「あの…先生………。私、暫く行きません。」
黒木先生は手帳に向けていた目をゆっくり私に向けた。
「どうかしましたか?」