それでもあなたと結婚したいです。

「病状も安定しているし、千春さんともやっと結ばれる事が出来ました。今更、辛い過去を思いださせなくてもいいんじゃないでしょうか?私達は今のままで十分幸せなんです。」


「本当にそう思いますか?」


何でも見透しているような黒木先生の瞳。

自分の考えが正しいと思う反面、先生に問われると途端に不安になる。


「千春さんが苦しむ姿をもう、見たくないんです。」


「何が彼の本当の苦しみか………あなたに分かりますか?」


「なっ何を言ってるんですか?私達は二人で乗り越えて来たんです!これからだってー」


「きついような事を言いますが、途中で逃げる人に彼は幸せに出来ません。あなたはそうゆう人でしたか?」


「何を言っているのか分かりません!急いでますのでこれで失礼します!!」


私は図星を突かれたようで動揺していた。

速足で歩くうちに息が弾み私は立ち止まっていた。

ふと横を見るとガラス張りのお店のディスプレイに自分が映っている。

私はガラスに映っている自分に問いかけた。


(せっかく、穏やかで幸せな毎日を送っているのにどうして黒木先生はあんなことを言うの!!別にこのままだって問題ないじゃない!過去に囚われるより今が大事でしょ?!)


「黒木先生だって、間違うことはあるはずよ!!」


私は必死に自分に問い掛けた。


「今まで自分を信じて頑張って来たんだからこれからだって同じよ………。逃げてる訳じゃない………。」


何度も自分に問い掛けてみても、ガラスに映った自分は何も返してはくれなかった。




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