それでもあなたと結婚したいです。

帰り道はあんまりよく覚えていなかった。

ただ、何も考えないようにするのに必死だったのかもしれない。


「お帰り!」


「えっ?どうしたの?仕事は?」


「思ったより早く仕事が片付いたんだ。それ、何?」


「えっ?これ?えっと………何だっけ………?」


「花枝…大丈夫?どうかした?」


「ううん。…何でもない!!さぁ、ご飯にしよ!!美味しいワインも買ってきたよー!!」


「いいね。」


(今考えなくてもいいじゃない!まだ、まだ考える時間があるし。猶予期間はあるんだから。)



千春さんの顔を見るとやっぱり嫌でも考えてしまう。

でも、今はこの瞬間は楽しいことだけ考えていたかった。

「花枝…早くおいで。」


「うん。」


「今日はこれ買ってきたんだ~。」


「あっ!エッグタルト!」


「後で食べよう。」


「うん!!」


「今日の仕事はどうだったの~?」


「それがさぁ…………」


大晦日の夜、私達は他愛もない話を二人で楽しんで、こんな風に過ごせる今に感謝して過ごした。


「あっ………年が明ける。」


千春さんが腕時計の秒針を読み上げる。


「5・4・3・2・1………明けましておめでとう。」


「今年も宜しくお願いします!」


「こちらこそ………宜しくお願いします。」



ただ一つだけ、心に引っ掛かる言葉を残して………。





『途中で逃げる人に彼は幸せに出来ません。』







< 359 / 436 >

この作品をシェア

pagetop