それでもあなたと結婚したいです。
帰り道はあんまりよく覚えていなかった。
ただ、何も考えないようにするのに必死だったのかもしれない。
「お帰り!」
「えっ?どうしたの?仕事は?」
「思ったより早く仕事が片付いたんだ。それ、何?」
「えっ?これ?えっと………何だっけ………?」
「花枝…大丈夫?どうかした?」
「ううん。…何でもない!!さぁ、ご飯にしよ!!美味しいワインも買ってきたよー!!」
「いいね。」
(今考えなくてもいいじゃない!まだ、まだ考える時間があるし。猶予期間はあるんだから。)
千春さんの顔を見るとやっぱり嫌でも考えてしまう。
でも、今はこの瞬間は楽しいことだけ考えていたかった。
「花枝…早くおいで。」
「うん。」
「今日はこれ買ってきたんだ~。」
「あっ!エッグタルト!」
「後で食べよう。」
「うん!!」
「今日の仕事はどうだったの~?」
「それがさぁ…………」
大晦日の夜、私達は他愛もない話を二人で楽しんで、こんな風に過ごせる今に感謝して過ごした。
「あっ………年が明ける。」
千春さんが腕時計の秒針を読み上げる。
「5・4・3・2・1………明けましておめでとう。」
「今年も宜しくお願いします!」
「こちらこそ………宜しくお願いします。」
ただ一つだけ、心に引っ掛かる言葉を残して………。
『途中で逃げる人に彼は幸せに出来ません。』