それでもあなたと結婚したいです。

「こんな傷、もうどうって事もないんだけど………周りがビックリするから隠してるの。」


彼女の腕には何ヵ所か薄い傷痕が残っていた。


「あたし、親に虐待されてたから………。でも、今は大丈夫だよ。もう、ちゃんと自分と向き合って克服してるから。あのドレスがその証拠!あの人が私を助けてくれて、この道を示してくれた。」


「そっか………。偉いね。頑張ったね。」


私のありふれた言葉に彼女はにっこり微笑んだ。


「花枝ちゃんは大事な人いるの?」


「うん………居るよ。旦那さんです。」


「えっ!結婚してるの?」


彼女は切れ長の大きな瞳を大きくぱちぱちして驚いた。


「そんな驚く事?私、もう30手前なんですけど………。」


「うそ!!もっと若いと思ってた。」


「はははっ………ありがと。」


「花枝ちゃんの旦那さんってどんな人?」


「えーっとねー。歳は…………」


二人でガールズトークをひとしきり楽しんで、お互いの事を教え合った。

彼女は年の割りに考え方も確りしていて、きちんとしたポリシーを持っていた。

暗い過去を思うとショックなのは確かだったけど、今の彼女は本当に強く、逞しく生きていて本当に良かったと心の底から思う。

きっと彼女にもトラウマや心の傷が沢山あったのだろう。

ここまで来るのに辛い道程があったのだろう。

だからこそ彼女は今、こんなにもピュアで輝いているのだろうと思った。


きっと千春さんも…………………いつか。


私は心の片隅で彼女に千春さんを重ねて見ていた。





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