それでもあなたと結婚したいです。
「じゃあ、私、そろそろ帰るね。これから旦那様が帰って来るから。」
「ラブラブでいいなぁ~。」
「こうなるまでが結構大変だったのよ。」
「何それ?聞きたい!」
引き留める彼女の腕をほどいて立ち上がる。
「また今度ね。」
「えー!ずるーい!」
ミレイはピンクの唇を尖らせていじけた顔をした。
(本当に若いっていいなぁ。何しても可愛い。)
「じゃあね!」
私は去り際に手を振って、お店を後にした。
ミレイは見えなくなるまで手を振ってくれた。
私は初めて妹でも出来た様な不思議な気分になっていた。
「軽く何か作っておこうかな?飲むかも知れないし………。」
帰り道は千春さんの好きなお摘まみを考えながら歩く。
最近の私の習慣になりつつある。
マンションのエントランスに着き、上を見上げると部屋の明かりが点いていた。
「やばっ!もう、千春さん帰って来たの?」
私はダッシュでエレベーターに飛び乗った。
鍵を開けて中に入るとリビングの電気はまだ、点いていない。
(あれ?まだ、帰って来たばっかりかな?明かりが点いていたあの部屋は千春さんの書斎かな?)
忍び足で書斎に向かうとドアが少し開いていて、彼の後ろ姿が見えた。
(ビンゴッ!!よ~し!ビックリさせちゃおう………。)
少しの遊び心で私は千春さんに近づいた。
(後…もう少し………。)
そっと手を伸ばして千春さんの目を隠した。
「だ~れだ!!」
「止めろっ!!!!!!!!!」
私の手が千春さんの瞳を隠した瞬間、怒鳴り声と共に頭に激痛が走る。
何がなんだか分からないまま私は床に倒れていた。
気を失う瞬間…千春さんの私を呼ぶ声が聞こえて、そのまま私の思考は真っ暗闇に堕ちていった。