それでもあなたと結婚したいです。
勢いよく飛び起きると、頭に鈍い痛みが走った。
「痛っ!!」
「花枝さん?大丈夫ですか?」
声の方に目を向けると心配そうな顔をした黒木先生が私を見ていた。
「あれ?…ここは?何で………私、ここに?」
「怪我したんです。それで私の所に。少し縫ってますが大丈夫です。傷も目立たなくなりますから。」
「どうして私、怪我なんて………。」
「覚えてないんですか?」
「えっと………」
「泉さんに突き飛ばされたんです。」
「!!」
「それで家具に額を打ち付けた様です。思い出しましたか?」
「………はい。でも、どうしてそんな事。」
「一種のフラッシュバックによる拒絶反応かと思います。」
「フラッシュバック?」
「ええ。あなたの行動が過去のトラウマに何か類似していたのでしょう。一瞬思い出した泉さんはパニックを起こし、あなたを拒絶してしまった。」
「千春さんは?彼は今、どこに?」
「あなたの無事を確認した後、気づいたらいなくなっていました。」
「そう…ですか。」
彼が傍に居てくれない事が酷く寂しく感じた。
「先生………。私は逃げていたんでしょうか?」
「花枝さん………。」
「私は苦しんでいる千春さんを見て見ぬふりをしていたんでしょうか?」
悔しくて、情けなくて、うつ向く瞳からはボタボタと涙の粒が落ちて、ブランケットに染み込んだ。
黒木先生は黙って私の震える背中をずっと撫でてくれた。