それでもあなたと結婚したいです。

冷たい声が二人に浴びせ掛けられた。

花枝は俺に向かって、にっこり笑うと涙をグッと拭って振り返った。


「その女呼ばわりされる筋合いありません。私は泉の妻です。」


「妻?!」


日登美は少し驚いてから、直ぐに絡み付くような視線に戻ると花枝を品定めし始めた。


「そんなに若くないのね?へぇ………上手くやったこと。」


「昔も今も、あなたのした事は犯罪です!」


「何を知ってるのか分からないけど、あんなのただの遊びよ。それに犯罪だとしても、もう時効でしょ?あなたに何が出来るって言うの?」


女は鼻で笑って花枝を睨み返した。


「…………遊び?よくそんな事が言えますね?あなたの所為で千春さんはずっと苦しんでいました。今だってそうです!幼い子供にあんなこと…………あなたを深く軽蔑します!」


「軽蔑?元はと言えばあの女が悪いのよ!いつまでも美徳さんと別れないから。今、思い出しても腹が立つわ!あの女さえ居なければ、今頃は私が千春くんの母親だったのに………!桑原の様な老いぼれと結婚する羽目になって、私の人生設計は散々よ!!」


怒りで喋り続ける女は嫉妬で狂っていた。

全てを人の所為にしてずっと生きてきたんだ。

あんなに恐怖を感じていたのに、俺は何だかその女が醜く憐れで、小さく見えた。


「な~んだ。ただのモテない女のひがみか………。あー情けない。恥ずかしくて見てられない。あんたみたいな女には絶対、死んでもなりたくないわ!!」


< 407 / 436 >

この作品をシェア

pagetop