それでもあなたと結婚したいです。
冷たい声が二人に浴びせ掛けられた。
花枝は俺に向かって、にっこり笑うと涙をグッと拭って振り返った。
「その女呼ばわりされる筋合いありません。私は泉の妻です。」
「妻?!」
日登美は少し驚いてから、直ぐに絡み付くような視線に戻ると花枝を品定めし始めた。
「そんなに若くないのね?へぇ………上手くやったこと。」
「昔も今も、あなたのした事は犯罪です!」
「何を知ってるのか分からないけど、あんなのただの遊びよ。それに犯罪だとしても、もう時効でしょ?あなたに何が出来るって言うの?」
女は鼻で笑って花枝を睨み返した。
「…………遊び?よくそんな事が言えますね?あなたの所為で千春さんはずっと苦しんでいました。今だってそうです!幼い子供にあんなこと…………あなたを深く軽蔑します!」
「軽蔑?元はと言えばあの女が悪いのよ!いつまでも美徳さんと別れないから。今、思い出しても腹が立つわ!あの女さえ居なければ、今頃は私が千春くんの母親だったのに………!桑原の様な老いぼれと結婚する羽目になって、私の人生設計は散々よ!!」
怒りで喋り続ける女は嫉妬で狂っていた。
全てを人の所為にしてずっと生きてきたんだ。
あんなに恐怖を感じていたのに、俺は何だかその女が醜く憐れで、小さく見えた。
「な~んだ。ただのモテない女のひがみか………。あー情けない。恥ずかしくて見てられない。あんたみたいな女には絶対、死んでもなりたくないわ!!」