それでもあなたと結婚したいです。
目の前で起きていることが信じられなかった。
あんなに恐怖心に刈られていた千春さんが堂々とトラウマの元凶となった女に立ち向かって、ちゃんと話している。
黒木先生との治療は無駄じゃ無かったんだ。
私は嬉しくて涙が込み上げていた。
千春さんは、やっと長年の悪夢から解放されたんだ。
震えなくなったしっかりとした腕に抱き締められながら私は夢のような現実に浸っていた。
「花枝…ありがとう…本当にありがとう。」
きっと今は千春さんも泣いている。
私は目一杯、彼を抱き締め返した。
暫くの間、私達は互いに抱き締めあったまま気の済むまで泣いた。
千春さんが大きく一呼吸をして話し始めた。
「………花枝…初めてこのホテルに来た時の事、覚えてる?」
「覚えてるに決まってるでしょ?新婚初夜だったんだから………。私は千春さんとの初めての夜を期待でドキドキしてた。………なのに千春さんったら、さっさと私を部屋に送って『おやすみ』って私を寝室に一人にしたのよ?」
「フフッ………覚えてるよ。あの時は初夜をどう切り抜けるか必死だったんだよ。なるべく君に嫌われたくなくて、ずっと一緒にいたかったから………。」
「あの頃が懐かしいな………。でも、戻りたくはないけどね!」
私達はお互い顔を合わせて笑い合った。
「花枝…。あの初夜をやり直したいんだ。」
「えっ?でも………千春さん…………。」
「試したいんだ。俺が普通の男になったか………。」