それでもあなたと結婚したいです。
廊下の先の大きな扉の前に着くと二人の小さな女の子が花籠を持って待っていた。
お揃いのピンクのドレスに花冠を着けている。
「わぁっ!おねえちゃんきれいね!」
「おひめさまみたい!!わたしもおおきくなったらそのどれすきたいな!」
「フフッきっと二人とも今よりも、もっともっと綺麗になって、色んなドレスが着れるようになるわ!」
「ほんとう?」
「うん!だから、頑張って運命の人を見つけてね?」
「じゃあ、おねえさんはうんめいのひとと、すえながく、しあわせにくらすの?」
「そうね………。そうなるように頑張るわ。」
「新婦様お待たせしました。入場になります。」
スタッフの人の合図で私は扉の前で姿勢を正した。
生演奏のパイプオルガンが鳴り響き、チャペルへと続く重い扉が開く。
二人の愛らしい妖精に連れられるようにバージンロードに足を踏み入れる。
目の前に花びらが舞い、夢の様な光景が広がる。
一歩、また一歩と歩みを進め、千春さんの元へと近づく。
中々近づけなかった結婚当初の、もどかしい気持ちを思い出した。
今すぐ駆け出したい気持ちをぐっと堪えて、また一歩進んだ。
「花枝!おめでとう!」
広いチャペルには少なすぎる立会人だけど、私には充分すぎる。
だって、皆、私達を助けてくれた大切な人ばかりだったから。
黒木先生、白金さん、桐島社長、美緒さん、ミレイに真弓……。
「幸せにならないと許さないぞ!」
通り過ぎる度に皆が口々に声を掛けてくれる。
泣くまいと堪えていた涙が頬を伝った。
涙で前に進めない。
バージンロードの途中で、泣いて動けなくなった私の手を握ってくれたのは千春さんだった。
「花枝…後もう少し、頑張って。」
「………ううん。………うん。」