それでもあなたと結婚したいです。
番外編 傍に在る幸せ
いつものように濃い目のブルーマウンテンをデスクに置くと、この部屋の主は顔を上げた。
「いつもありがとう花枝ちゃん。」
「どういたしまして、仕事ですから。ところで部長………もうすぐ辞令の時期です。大きな契約も取ったことですし、今度こそ昇進の話が出るんじゃないんですか?皆もそう噂してます。」
「あははははっ。そんな昇進なんてナイナイ!残念ながら俺はずっと部長止まりだよ。」
「そんな事無いですよ!!絶対何処かのポストが用意されてますって。」
「そうだといいんだけど、俺には欠点が多いから駄目なんだ。それに今の部長職でも十分満足しているんだよ。上に行くと営業の現場からも遠退くから。」
「順番的にも白川部長だと思いますし………謙遜しなくても…………ー」
「違うんだ。」
白川部長は困った様な笑顔を向けて私の言葉を遮った。
部長は度々こうゆう顔を私に向ける。
前から感じてた疑問。
無意識にしてしまう表情だと思うけど私にだけ見せる。
何かを訴えている顔。
こんな顔をされて防御線を張られたら、私はいつもこう言うしかない。
「そう………ですか。」
いつも気になるけど一歩踏み出すことが出来なかった。
(白川部長…。いつも何を考えているんですか?私が聞いてもいいですか?)
今日も私は言いたい言葉を飲み込んだ。