それでもあなたと結婚したいです。
13 それぞれの想い
「はい、……はい、そうです。彼女に話しました。私は大丈夫です。……はい、…はい、いえ!それは私が……はい、分かりました。それじゃあご迷惑をかけると思いますが宜しくお願いします。」
携帯を片手にソファーの手摺にもたれ掛かった。
相手に真実を知られた後はいつも空虚だ。
「彼女、泣いてなかったな………。」
大体の女性はこの厄介な病気がばれると俺を罵り、自分がいかに可哀想か泣きながら語った。
今回も慣れた様に、この光景を予想していたが、違った。
彼女の言葉は正義感に溢れていて正しかった。
初めて顔を見た時は綺麗な人だとは思ったが、それだけだった。
綺麗な人は世の中、結構沢山居て、俺の表面上の肩書きや外見に釣られる人も大勢いた。
彼女もきっとその中の一人だと勝手に思って義務的にした見合いだったのは間違いない。
そんな燻っていた俺に、彼女は強烈なパンチをくれた。
“目を覚ませ!!それでも、男か!!!!”
俺の事なんかすっかり眼中になく、ただ自由に自分が思うように颯爽と走って行く彼女の後ろ姿は、誰よりも格好良かった。
あの時、俺は今までに感じた事のない衝撃を感じたんだ。
彼女を悲しませると知っていて結婚を申し込んでしまった。
してはいけない事だと知りながら彼女を巻き込んでしまった。