それでもあなたと結婚したいです。
「泉 千春さんは中学の頃から知っているんですよ。私の父が彼の担当でした。」
「そんなに前から……。」
「子供の頃は問題はありませんでした。子供はただ一緒に遊んでいるだけで繋がっていられますから。所が体が成長するにつれて周りも変わっていきました。当然の事です。そうやって皆、大人になって行くのですから。…………ただ一つ、泉さんだけを残して……。」
黒木さんは自分のコーヒーを一口飲んで、喉を潤すとまた話し始めた。
「とても怖かったでしょう。不安だったでしょう。自分の体が同級生と違う事に気づかされた時は。…………私の父が急死して、私が彼を引き継いだ時には、泉さんは、必死に周りに合わせて、嘘をつき続けることに疲れきっていました。それでも、独りで生きていこうと彼は決めていました。」
「それならどうしてお見合いなんて………。」
「仕事だけを生きていく糧にしているようでした。当然の様にどんどん彼は仕事にのめり込み、気づけば外資のCEO。結婚適齢期になっていて、………あなたも見れば分かるでしょう?あれじゃあ、周りが放っておくはずがない。」
「私もその中の一人だったんですね。」
「私もそうなるんだと思っていたんです。二人がお見合いをしたあの日までは……。」