Am I What Colors?ー元姫の復讐ー


しかし、問題は咲誇だった。



圭太達いわく、倒れた俺を見た咲誇は正気を失い暴れ回った。


屋上でそのまま意識を失った咲誇は、目を覚ました時にはすべての記憶を失っていた。


自分の名前から生い立ち、そして俺のことも綺麗さっぱり、だ。


医者が言うには、過度のショックから現実を受け入れられなくなったための自己防衛的な記憶喪失らしい。



しかし学力と喧嘩の強さだけは健在で、本人もなぜこんなに動けるのかと気味悪がっている。


最初は、族の俺らを警戒して見舞いすら受け付けなかった咲誇。


2ヶ月かけてなんとか信頼を取り戻した俺は、前と同じようにこのマンションで暮らしている。



「蓮央さん、お味噌汁とお吸い物、どっちがいいですか?」


「ん?あーじゃあ、味噌汁で」


「はーい」



喧嘩が強いとはいえ、すっかり気が弱く大人しくなってしまった咲誇は料理がうまい。


前の咲誇とは、正反対だ。


俺のことを『蓮央』ではなく『蓮央さん』と呼ぶし、敬語だし。


何度もやめろって言ってるのに。


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