檻の中から捧げる君への嘘
何の用だ?
もしかして この間のこと
やっぱり怒ってた?
思い当たる節なら
いくつでもある
殺されるのかな
でも
あいつが殺すなんて想像も出来ない
「まあ…人なんて
いくらでも変わるか」
見張り番に聞こえないように
小さな声で呟く
「いくのか?」
「っ!?」
行くことには決めたものの
どうやって抜け出そうか
悩んでいると
見張り番の男が
声をかけてきた
「いくのか?」
再び同じことを聞いた男には
私の驚いた表情は
見えはしないだろう
暗いのもあるけど
男はそもそも私を見ていない
周りのやつに知られては
いけない…ってことか
「行きます」
「準備だけしとけ」
「はい」
見張り番の男は
私の意志を確認すると
それ以上は何も言わず
時間が来るのを
ただひたすら待った