檻の中から捧げる君への嘘
「本当はさ、もっと早くに
会いに来るつもりだったんだけど
どうやって君に会うか
悩んでいたら遅くなったんだよ」
藍はパンを食べている私を見ながら
怖いくらい優しく微笑む
この男の優しさは
無条件過ぎて怖い
何かを求めているわけでもなく
ただただ笑う
それが私には恐怖だった
「……おいしい?」
何も喋らない私に苦笑した藍
その問いかけに
頷くことで返事をした
「君はいつから此処にいるの?」
「9歳」
「………………そんな小さいときから……
今は?いくつになったの?」
「16」
「えっ!俺より年上だったの?
見えない……てか大人っぽいのな
あ…敬語のほうがいい……ですか?」
「いい。気持ち悪いから」
「気持ち悪いって……酷いな」
「……………………っクスッ」
「おい!笑うなよ!……くそー」
彼が悔しがっているのを横目に
手の中で今だに暖かさを
保っているパンを口に含む
「いくつ?」
「え?……15だよ」
私の質問に少し驚いた彼は
すぐに我にかえって答える
「誕生日は?」
「1ヶ月後…だけど」
「なら同い年、私もついこの間が
誕生日だったから」
私の言葉に彼は嬉しそうに
「そっか!」
と言って笑った