檻の中から捧げる君への嘘
「えっ……んちゃん……」
目の前でたくさんの涙を流す
彼は最後に私の名を呼んで
死んでいった
私はいつも
最期のこの瞬間
何も聞こえなくなるんだ
見物客の声も鐘の音も
全てが無になる
私を見つめる相手の目には
憎しみと悲しみと苦しみ……
負の感情ばかりが写る
その目に耐えられず
相手から離れて
檻の外へ向かうんだ
逃げるようにして
「BLOODY MARY握手してくれ!」
「BLOODY MARY こっちに視線を!」
私をそう呼ぶものの多くは
私のファンのようなもので
出ていく際によくこうして
求められることがある
その要望に私は
一瞥もくれずその場を跡にする
ほんとうはアンバーの私が
人間を無視するなんてことしたら
いけないんだろうけど
あの人の命令だから仕方がない