ピンクの箱
後編
高校三年生~春~
「もう、3年生だね」
「うん。」
「私達、卒業しても一緒だよね?」
「うん。」
そんな会話さえ、もう夢の中
________________ピンクの箱________________
「聖汰、委員会終わった。」
後ろから聞きなれた声がする。
振り返って読んでいた本を閉じると、逢衣が微笑んだ。
「今日は、何の本読んでたの?」
「んー。小説」
「いい本あったら私にも教えてよ。
聖汰が好きな本、
結構面白いと思うんだよね。」
「じゃあ俺色に染めてやる なんちって」
「何そのキャラ(笑)」
他愛ない話をしながら、1年の時に通った桜並木の通りを手を繋いで歩く。
逢衣とこんなふうに
歩くとは思わなかったな。
いつの間にか
逢衣がいて当たり前の生活になっている。
それがどんなに幸せなことか。
俺にはまだ、わからない。
「ちょっと待って。」
「うん?」
少し小走りに自販機へ向かい、
小銭を入れる。
出てきた箱型を逢衣の頬に当てる。
「はい、お疲れ。」
「あ、ありがと。」
彼女は、1年の時と変わらずに同じふにゃりとした笑顔でこっちを見る。
「あのさ。」
「うん?」
「いちごミルク、飲ませてくれない?」
「あれ、前にいちごミルク苦手だとか言ってなかったっけ?」
少し悪戯に微笑む彼女に、
「子供じゃないからね。」
悪戯に微笑み返して逢衣の手からいちごミルクを抜き取った。
「...んー、いちごとミルク。
単体ならいけるんだけどな。まだ、
一緒になった時の良さがわかんないな。」
ストローを口に含みながら夕日を見る。
「無理して飲まなくていいのにー。」
逢衣はにこっと微笑んで俺の手からいちごミルクを抜き取ってストローを口に含んだ。
「いや、無理とかじゃなくて。
今はまだあまり良さが分からないけど
きっとこれから
好きになる気がするんだよね。」
「えー本当に? 無理してない?」
逢衣は心配そうに俺の顔をのぞく。
「ほら、ずっと一緒にいるとさ。
好きなもの、
嫌いなものが似るらしいじゃん。
いつも俺の隣にいるのは、逢衣だから。」
振り返って、顔を真っ赤にして硬直している逢衣の唇を塞ぐ。
ほんのりと甘い味がした______。
『いい本あったら私にも教えてよ。
聖汰が好きな本、
結構面白いと思うんだよね。』
君の、何気ない言葉が
俺の心を温かくするんだ。
ただ
泣いて笑って
過ごす日々に
俺が君の隣に立っていられることで
俺が生きる意味になる
______________だから
だからずっと
俺の隣で
いちごミルク、飲んでてよ