Crystal Sky 〜お姫様は、魔法使いに恋をする。〜



「どげんした?
ぽんぽん、くずらかしたか?」




店先から戻って来た
おばあちゃんの顔を見たら
なんか…いきなり…




「―――… 初めての〜恋か〜
つらいなぃ〜」


「ゔ〜…」



かっぽう着のヒザに
顔を埋めて、大泣きして ―――


まだなにも言ってないのに


おばあちゃんはわたしが
魔法使いを好きな事とか
なぜか全部、わかってた…




「… しかもあん人はぁ
ふつうの勤め人じゃあ、なかねぇ」




顔をあげる

どういう…意味だろう…


「… 遊び人?」


「あ〜は〜は〜

まあ、よか男やけん〜
そげんゆうふうにも、見える

ばってん ――

… なんか、背負っちるよぅ
そげん目ぇ しちるなぁ」


「――……」


「… 一筋縄や、いかんな男ちゃ」




「…ずっと、泊まっちると?」


「ホヤ、取り替えてくれてなぁ」


そう言っておばあちゃんは
天井を指さす


電球…取り替えてくれたんだ
背、高いもんね…




「たまぁにいなくなる
ばってん、ちょこっとの間
おんしゃあよ」


「そうったい…」




「ばってん…
好いとぉら好いとーで
良かろーもんの」


「――…え」




「いっぺんは…
なんかあっち、別れても…

一緒にいるのか運命なら
また会えるのが
ほんなこつの、運命やけん」




「――… おばあしゃんは
そげんゆう恋ば、したの…?」




「…一緒にいられる時に
別れる時の事ばっかり考えとうのは
ほんなこつの、大ボンクラちゃ」




おばあちゃんは
両手に手を置いて
にっこり 笑った…



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