夏の前の日

「泣かんって決めとるのに
 ほんっとリン泣き虫過ぎ。
 ユウ困らせるし参ったな〜」

「髪も乾いたし、泣いたら目が
 腫れちゃうじゃんね。」

「よし、準備しよっか。ユウ何着るー?」


俺は知ってる。

お前が意味なくぺらぺら話すときは
俺にじゃなくて自分を言いくるめようと
してるときだってこと。


「・・・おう」

再び溢れそうな涙を必死に堪えるのは
いつもお前が俺より強いから。
せめてもの格好のつけかただった。




***



「リンまだかー」

女のくせに俺より準備が早くて
家事まで済ませるのに
今日は俺より遅い。

「ピアスが・・・あった!行こ!」

巻いた髪の毛の隙間から見えるのは
いつか俺がプレゼントしたピアス。

こういう、いちいちなところが
可愛くてたまらない。
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