夏の前の日
「タクシー、もう下におるよ」
「呼んどいたからね、さっすがリン」
いつもより気分良さそうな
俺の姫は
さっき泣いた後とは思えなかった。
タクシーに乗り込んでから
行き先を伝えて
一緒にタトゥースタジオへ向かった。
「ねぇ、ピアスより痛い?」
「場所によるんじゃね?
リンのピアスんが考えらんねぇ」
いい加減辞めろっていった半年後に
漸くピアッシング行為をやめたリン。
首や鎖骨、指に腕
あちこちにピアス痕が散乱している。
ある意味、自傷行為のソレ
「もうずっと開けてないもん。
感覚も忘れたよー」
昼前に二人の施術が終わった。
お揃いの字体で、左足の甲に
お互いの名前。
背中よりずいぶん痛かった俺に対して
気持ちよかったって言ってるリンは
頭が少しおかしいかもしれない。