夏の前の日

「リン、食えなかったわ」

クラブじゃよく聞く話し。
デートするのも困惑だったのは
左手を見ればすぐに分かった。

左手の薬指にはめてある
シルバーリング。
1粒のダイアモンドが輝いて見えた。

そのとき、俺は女と遊び放題だし
ドラッグに狂っていた。
あわよくばって思っていたけど
リンもジャンキーだったし

ただの連れにしかすぎなかった。

いつかのクラブ帰りに数人で
カラオケに行ったとき
酔った勢いで言った一言。


「リン、来週俺とデートしてや」

悩み抜いた末にOKをくれた。
翌週の水曜日に学校をサボって
デートに来たのがここだった。





「あーーーいや、大人っていや」

リンの口癖がまたでた。
20歳になるときもそうだった。

リンは大人を物凄く嫌う。
中学生の言う、親や先生がうざい!
ってもんじゃない。

「お前、でも綺麗になったな」

「やめてよ、恥ずかしい」

照れるリンが可愛い。
でも本当に綺麗になった。
< 14 / 73 >

この作品をシェア

pagetop