夏の前の日
「リン、食えなかったわ」
クラブじゃよく聞く話し。
デートするのも困惑だったのは
左手を見ればすぐに分かった。
左手の薬指にはめてある
シルバーリング。
1粒のダイアモンドが輝いて見えた。
そのとき、俺は女と遊び放題だし
ドラッグに狂っていた。
あわよくばって思っていたけど
リンもジャンキーだったし
ただの連れにしかすぎなかった。
いつかのクラブ帰りに数人で
カラオケに行ったとき
酔った勢いで言った一言。
「リン、来週俺とデートしてや」
悩み抜いた末にOKをくれた。
翌週の水曜日に学校をサボって
デートに来たのがここだった。
「あーーーいや、大人っていや」
リンの口癖がまたでた。
20歳になるときもそうだった。
リンは大人を物凄く嫌う。
中学生の言う、親や先生がうざい!
ってもんじゃない。
「お前、でも綺麗になったな」
「やめてよ、恥ずかしい」
照れるリンが可愛い。
でも本当に綺麗になった。