夏の前の日

「ねぇ、ユウ?
 リン幸せだったよ。
 レイと別れてたどん底から
 救ってくれたのユウだったんだよ」


・・・・・。

夢の中の俺はなにも言えない。
あの時と同じ。

回想されるものを
ただ見ているだけ。


「ユウはリンのこと好き?」

「・・・少しでも愛してくれてた?」

「あぁ」


最後に見たリンも
悲しそうに笑ってた。


「じゃあ、バイバイ」


手に持てるだけの荷物を持って
家を出ていった。

リンと暮らすために借りた
リバーサイドにある家の中には
リンの荷物はいつの間にか
なくなっていた。

それすらも気づいてなかった。


失ってから気づくって
ありきたりな言葉があるけど
それじゃ、遅い。

遅すぎる。


ずっと俺の横にいたのに。
じっと俺のリンだったのに。


「クソ―――ッ」
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