罪人と被害者
善意
赤いライトが、視界の縁でふわふわと点滅する。
「や…!嫌だ…!!離してっ!僕は、僕は…!」
気持ち悪いほどのひとの群れの中で、一際目立つ叫び声。
大丈夫だからね、なんて青い服を着た屈強な男達が彼を優しく黒い車へ連れて行く。
かわいそうに、見境がなくなってる、気持ち悪い、あれが性犯罪者。
そんな声が耳に入っているのに、俺はもう彼しか目になかった。
「…りくっ!」
「おじさん一一!助けてよ、おじさん一一」
…わかってた。
「これでいいんだ、これで…お前は、」
決して報われない罪なのだと。
「お前は幸せになるべきだ…」
「嫌だぁあああああ!!」
だからこそ、これでいい。
泣き喚く被害者に、連行される容疑者。
一つの俺の罪が幕を下ろした。